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双極性障害(躁うつ病)の過剰診断?流行診断になりつつある双極スペクトラム障害について

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双極性障害(躁うつ病)の有病率が高まる現在

一昔前まで双極性障害(躁うつ病)の有病率は100人に1人でした。しかし、現在の有病率は25~50人に1人に増えています。この有病率が高まった理由の一つとして双極スペクトラム障害という概念が医療現場で用いられるようになったからと言われています。

双極性障害(躁うつ病)は明らかな躁病エピソードまたは軽躁エピソードが確認されてから初めて診断されるものであり、うつ病とも双極性障害(躁うつ病)とも振り分けられない中間地点にいる患者は双極スペクトラム障害として扱われ、治療を受ける患者が増えているのです。

「双極スペクトラム障害」という新しい概念

双極スペクトラム障害の概念は、双極性障害Ⅰ型やⅡ型のように国際的に認められたものではないため、これが双極性障害(躁うつ病)の過剰診断に繋がっているという批判の声もあります。さらに最近は軽微双極性(Soft Bipolar)といった双極スペクトラムとは別の概念を提唱する研究者もいるとか何とか…。もはや双極性障害はうつ病に次ぐ流行りの精神疾患になりつつあるような気がします。

「スペクトラム」にも概念が複数ある

ガミー医師が提唱した「双極スペクトラム障害」と、アキスカル医師が提唱した「双極スペクトラム」の概念が代表的です。一見「障害」の有無の違いのように見えますが、中身は大きく違うようです。

ガミー医師の「双極スペクトラム障害」の概念

  1. 家族に双極性障害(躁うつ病)の人がいる
  2. 抗うつ薬で躁状態が誘発されたことがある
  3. 3回以上のうつ病エピソードを経験している
  4. うつ病エピソードの期間が短い
  5. 非定型うつ病を発症
  6. 精神病性うつ病(幻覚や妄想などを伴ううつ病)を発症
  7. 25歳以前にうつ病を発症
  8. 産後うつ病を発症
  9. 抗うつ薬の効果が弱い・効かない
  10. 衝動的な自傷行為や自殺企図を繰り返している
  11. これまでに自然発生的な躁状態がない(必須)

上記の項目が多数当てはまれば双極スペクトラム障害と診断されることがあります。

アキスカル医師の「双極スペクトラム」の概念

双極スペクトラムと双極スペクトラム障害の違い

どちらかと言えば現在はガミー医師の双極スペクトラム障害について語られる場面が多いため、この記事内では双極スペクトラム障害という表記で統一させて頂きます。

双極性障害(躁うつ病)はうつ病と誤診されやすい

双極性障害(躁うつ病)は躁病相よりうつ病相が圧倒的に長い疾患で、罹患期間のうちⅠ型では31.9%、Ⅱ型では50.3%の期間がうつ病エピソードまたはうつ状態で過ごします。そのため単極性うつ病や反復性うつ病との見分けは難しいのです。かく言う私も初診時の診断名はうつ病でした。

初診から双極性障害(躁うつ病)と診断されるまでの期間

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双極性障害(躁うつ病)の講習会で頂いた資料を元に作成したグラフです。似たようなデータがグラクソ・スミスクライン株式会社の情報サイトにありました。

双極性障害(躁うつ病)は軽躁エピソードまたは躁病エピソードが確認されないと診断されない病気なので、初診の時点でなかなか見抜きづらい特徴を持ちます。

うつ病と双極性障害(躁うつ病)の薬物療法は全く違う

病名が似ている両者ですが、うつ病と双極性障害(躁うつ病)では薬物療法に用いられる向精神薬が違います。

うつ病の場合

25歳以上のうつ病患者であれば、抗うつ薬が第一選択薬になるでしょう。それに合わせて抗不安薬や睡眠薬が適宜処方されます。

双極性障害(躁うつ病)の場合

双極性障害(躁うつ病)の治療に気分安定薬は必須です。気分安定薬の多くは抗てんかん薬でもあるので、この時点でうつ病とは違う治療になります。

さらに双極性障害(躁うつ病)の場合、抗うつ薬を投与することで躁転する可能性を考慮し、抗うつ薬での治療を避ける医師が多いです。

教科書通りの処方例を上げると気分安定薬+抗精神病薬が双極性障害(躁うつ病)の治療薬です。

薬物療法の内容が違うからこそ早期発見が必要不可欠

双極性障害(躁うつ病)なのにうつ病と誤診された患者が、抗うつ薬による治療によって躁状態を誘発する可能性があることを考えると初診の時点で両者の違いを見極める必要があるのですが、多くの患者はうつ状態で病院を受診します。過去に躁病エピソードまたは軽躁エピソードがなかったかどうかの聴取がなされなければ、初診の時点でうつ病と診断されても仕方がないのです。

双極スペクトラム障害の存在が双極性障害(躁うつ病)の過剰診断に繋がっているのか?

精神科医の中でも意見は割れているようです。

製薬会社による熱烈なマーケティング効果

DMS‐Ⅳが発表されてから双極性障害(躁うつ病)の診断率は約2倍に増えました。その背景には「双極性障害(躁うつ病)は見過ごされている」という製薬会社の熱烈なマーケティングによって軽躁エピソードが過剰診断された影響も少なからずはあるかと思います。

私が通院している病院では頻繁に製薬会社の営業マンが出入りしている場面を目撃します。食事療法の勉強会のときは日本イーライリリー株式会社(ジプレキサの販売元)の営業マンが患者の指導にあたっていました。だから主治医はジプレキサ推しなのかなと勝手に精神医療の裏側を垣間見た気持ちになりました。

小児双極性障害の診断も流行している

小児期の双極性障害(躁うつ病)の診断率はこの20年で40倍に増加しています。小児期のイライラやかんしゃくのほとんどが正常、あるいは注意欠陥/多動性障害(ADHD)、反抗挑戦性障害/反抗挑発症(ODD)に伴うものであり、双極性障害(躁うつ病)とは用いられる向精神薬が違う別の疾患になります。「気分の波が激しい」や「感情の起伏がある」と聞くと双極性障害(躁うつ病)と連想しがちなのですが、誤診されやすい精神疾患はうつ病の他にもたくさんあります。

このWEBサイトも製薬会社のものですね…。

現在は大人のADHDも話題になっています。

精神疾患に対する世間の認知度が高まったことによる弊害

現代は書籍だけでなくインターネットからでも簡単に精神疾患の情報が得られるようになりました。時代の流れからか精神科は急増し、製薬会社による「うつは身体の痛み」というCMがテレビで流れるようになり、昔に比べて精神科を受診する敷居が低くなったように感じます。

余談ですが、外科と産婦人科は医療訴訟が多いため医師が減少傾向にあります。

精神科の初診時に診断名を明確にすることは難しいと思います。初診での診察時間はおよそ30分、長くても1時間程度。そんな短い時間で患者の全てを医師に伝え、理解してもらうのは到底無理なことであると言えるでしょう。誤診が横行する理由の一つかもしれませんね。

問診だけで診断名が決まることの弊害

患者の話に耳を傾けようとしない、生活指導もない。けれど向精神薬の多剤大量処方だけはするヤブ精神科医も実際にいます。そんなヤブ精神科医に何らかの不調を訴えれば、たとえ健常者だったとしても何かしらの診断名がつくことでしょう。精神疾患ではない人が精神疾患だと診断されている可能性は無きにしも非ず。それは精神疾患が問診だけで判断される病気だからこその弊害かもしれません。

安易な自己診断は自分の人生を潰す恐れがある

多少の気分の上下は健常者でも経験するものであり、双極性障害(躁うつ病)の症状を見て「自分に当てはまるかもしれない」と安易に自己診断してしまうことは怖いです。特に双極性障害Ⅱ型は躁状態ではなく軽躁状態で留まるため、病的な気分なのか否かの見極めは精神科医でも難しいような気がします。

話の途中ですが、少し小言を言わせてもらいます

たまに健常者で「躁状態」という言葉を使っている人をチラホラ見かけるのですが…健常者に躁状態はないです。これもよくありがちですが健常者にうつ状態もないです。せめて「ハイテンション」や「憂うつ」という言葉を使ってほしいなぁ、なんて思ったりもします。以上、つまらない小言でした。

私が病識を確立できない根本的な理由

この双極スペクトラム障害のことを学んでからますます「私は病気ではないのでは?」と思うようになりました。よく考えれば気分の波は誰にでもあるもの。それが日常生活と社会生活にどれだけの影響を及ぼすか否かで判断される病気だとしても、精神疾患の確定診断できる検査方法がない時点で主治医の言っていることが全て嘘のように思えて信用できなくなるときが不定期に訪れます。そんな状況の中で一体何を、誰を信じれば良いのだろう。

確定診断できる検査方法を求む!

過小診断も過剰診断も問題ではあります。診断は精神科医のさじ加減でコロコロ変わる。コロコロ変わると患者も戸惑う。正しく治療を受けたくても今の精神医学・医療では限界なのかなという気がしました。

精神疾患の鑑別診断補助として利用される光トポグラフィー検査。鑑別診断ではなく確定診断できる検査があれば双極スペクトラム障害の狭間で苦しむ人はきっと少なくなるはず。精神疾患がデータとして現れる検査方法が見つかるときは遠い未来の先にあるのかもしれませんね。

参考書籍

「うつ」がいつまでも続くのは、なぜ?-双極Ⅱ型障害と軽微双極性障害を学ぶ

「うつ」がいつまでも続くのは、なぜ?-双極Ⅱ型障害と軽微双極性障害を学ぶ

  • 作者: ジム・フェルプス,荒井 秀樹,本多 篤,岩渕 愛,岩渕 デボラ
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未熟型うつ病と双極スペクトラム―気分障害の包括的理解に向けて

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